第2回 チョークポイント依存度とは何か(前編)——形の項目: 定義・段階分解・合成則
CSIの方法(全7回)
前回(第1回)は、なぜ測るのか——止まりやすさの現在地を、月次で——を述べました。今回は、この指数が測っている量そのものを定義し、その最大の項目——形——の測り方を開示します。
定義
チョークポイント依存度とは、一つの法域の判断で、供給が止まりやすい状態にあるかの度合い——言い換えれば、止められやすさ——です。0〜100で表し、値が高いほど、一つの判断で止まる点への依存が強い。
この度合いは、第1回で宣言した通り、形と、政策の事実——二項目の合成として測ります。月報のダイヤルに出るCSIが、その表示値です。本回が扱うのは、このうち形の項目——シェアの実測(構造スコア)の作り方。政策の事実の項目と、二つの束ね方は、第3回で。
キーワードは「形」です。この指数は、いま何かが止まっているか(事件)や、いくら損をするか(被害)を測りません。測るのは、止められうる構造がそこにあるか——事件の前から存在し、事件の後も残る、供給の鎖の形です。
なお「CSIの方法」で「措置」と言うときは、供給国の政府による輸出管理——許可制の導入・特定国向けの禁輸・対象事業者の指定——を指します。公告で発効し、民間の貿易を即月止め得る制度です。チョークポイント依存度は、この措置一つでどこまで止まりうるかの、構造側の測定だと言い換えられます。
段階分解——採掘の地図と加工の地図は、別物
鉱物は「掘る→精製・加工する→部材にする」という鎖を通ってきます。CSIはこれを原料(S1)/中間体(S2)/部材(S3)の段階に分けて、段階ごとに別々に測ります。物資により2〜3段階です。
なぜ分けるのか。段階ごとに、集中の地図が違うからです。
レアアースの採掘の中国シェアは69%——高いが独占ではありません。しかし分離・精製は約9割が中国で、採掘で3割ある「中国以外」も、精製のために中国へ運ばれます。リンは逆の形をしています。中間体の黄リンはベトナム・カザフスタンからの調達で中国シェアはほぼゼロ、しかし下流のリン酸は約9割が中国——分散と集中が、段階ごとに反転している。
「どの国が何%を掘っているか」という一枚の地図だけを見る分析は、この立体を見落とします。段階分解は、この指数の背骨です。
組み込まれた曝露——鉱石を輸入しない国の、鉱石依存
段階分解には、もう一つの役割があります。見えない依存を可視化することです。
日本は中国からタングステン鉱石をほとんど輸入していません。ではタングステンの上流依存はゼロか——違います。日本が輸入する中間体(タングステン酸アンモニウムや金属粉)の出発点は、鉱石です。そして世界のタングステン採掘の約8割は、中国の鉱山が担っています。鉱石が、そのまま日本に届くわけではないのです。中国で掘られた金属は、中間体の形になってから日本に入ってくる——つまり、この依存は鉱石の輸入統計には現れません。
したがってCSIは、貿易ラインが存在しない上流段階については、輸入統計ではなく世界生産シェア——ある物資の世界の生産量に占める、国・地域別の割合(各国地質調査機関等の年次統計)——で曝露を測ります。輸入統計(月次・全数の申告記録)と違い、年次で、一部に推計を含む代理指標です。したがって月報の連鎖図では破線、カルテでは「生産統計ベース」と表示し、性格の違いを消しません。鉱石が来ないからこそ、依存は見えない形で来る——この一点を塞がない測定は、最も深い依存を取り逃がします。
では、中国の輸出統計で追えばよいのではないか——第三国へ出た鉱石の総量なら、たしかに見えます。見えないのは、その先です。その鉱石がどの工場に入り、どの中間体になり、どこへ売られたか——フローとフローをつなぐ対応は、どの国の統計にも存在しません。つなぐには按分の仮定が要り、それは当方の推計になります。輸出量そのものも、生産の代理にはなりません——中国は掘った鉱石の大半を国内で加工・消費し、鉱石のまま外へ出る量はわずかです。しかも輸出管理の下では、輸出量は絞られた結果を映します——測りたい「止まりうる形」を、止めた結果で測る循環になり、絞るほど数字は「依存低下」に見えてしまう。そして上流の括りで知りたいのは、今月どのルートを流れたかではなく、どこで掘られているかという構造です。一つの法域の判断で止まりうる形は、生産の所在で決まる——構造は、生産統計が直接測ります。
したがってこの段階値の読み方は、一つ上の抽象です。「輸入中間体に埋め込まれた中国産鉱石の比率」の推定ではありません——それを出すには、存在しない対応表と按分が要ります。測っているのは、鉱石の層で、一つの法域の判断が世界の供給をどこまで細らせ得るか、その上限。鉱石輸出の制限でも、内需優先への振り替えでも——経路を問わず効く値として読んでください。

合成則——平均で薄めない
段階ごとの測定値を、最後に一本の数値へ束ねます。ここがこの指数の設計の核心です。
各段階について、「握られていない割合」——輸入に占める当該法域以外の比率に、定量典拠のある国内還流(リサイクル・国内生産)を加味したもの——を求めます。これを束ねる方法は二つありえます。足して割る(算術平均)か、掛けて根を取る(幾何平均)か。
CSIは幾何平均を採ります。理由は単純で、供給は、最も弱い段階で止まるからです。原料をどれだけ分散しても、中間工程の輸入が一つの法域に集中していれば、そこへの措置一つで全体が止まる。算術平均は、強い段階の数字で弱い段階を薄めてしまう。幾何平均は、弱い段階の側に引き寄せられる——「生育は最も不足する養分で決まる」という、リービッヒの最小律(1840年)と同じ数理です。
実例がフッ素です(2026年5月測定点)。原料の蛍石は中国シェア57%まで分散が進みました。しかし中間体の無水フッ酸は95%。もし単純平均で束ねれば、全体は76相当——「やや高い」程度に見えます。実際の構造スコアは85.5。平均が弱点を隠すのに対し、幾何平均は「中間工程が全体を規定している」という現実をそのまま数値にします。この合成則は、分散の進み具合を正しく映すためにも要ります。平均で束ねると、もともと集中の低い段階が少し分散しただけでも、構造スコアは下がります——効いていない場所の変化が、数字の上では前進に見えてしまう。最小律なら、構造スコアが動くのは、最も細い工程——絞り——が動いたときだけです。業界の分散が絞りに届いたかどうかが、そのまま数字に出ます。
(この85.5はシェア実測の層=構造スコアの値です。月報のダイヤルに表示されるCSI 71.6との関係——政策の事実をどう重ねるか——は第3回で扱います。)
物資の括り方——どこからどこまでを「一つの物資」として測るか
本計器は、供給の連鎖を「物資」という括りで区切り、括りの内側の段階だけを合成則で束ねます。括りをまたいだ合成は行いません。括り方には、三つの原理があります。
第一に、判断の単位。 測るのは「一つの法域の判断で供給が止まりやすい状態」です。その判断——公告——は、物資の形態を名指して作用します(磁石、中重希土、ガリウム)。したがって括りは、一本の公告が一斉に止めうる範囲で区切ります。実際、10物資の括りは、既往の主要措置が名指した単位とほぼ一対一です。
第二に、観測の単位。 括りに入れられる工程は、日本の輸入として観測できる形態(統計の品目ライン)と、最上流の生産統計までです。国境を越えた時点で別の製品に埋め込まれた工程は、その製品側からは観測できません——国内生産や第三国のメーカーが原料をどこから買っているかは、貿易統計に存在しないからです。観測できない経路を、当方の推計で埋めることはしません(公表された生産統計を代理指標に使うことと、独自の推計で補うことは、分けています)。
第三に、判断主体の単位。 各物資の読みは調達・在庫・投資の判断の入力であり、判断は調達単位ごとに行われます。磁石を買う判断と、その原料を買う判断は、別の主体の仕事です。括りは「一つの調達判断が見るべき曝露の範囲」に一致させ、上流の危険は、上流を買う判断主体側の括りが直接示します。
この三原理の帰結を二つ。第一に、隣り合う括りが同じ工程を共有することがあります——希土類の金属・合金は、原料の括りの出口であり、磁石の括りの入口です。両方の買い手が同じ曝露に直面するため、両方の括りに入ります(なお、統計の品目ラインが二つの物資を分離できない場合、値は▽=下限の扱いになります——第5回)。第二に、完成品の括りの値が低く、その上流の括りが高い、ということが起こります。2025年4月の措置の前月、現行の定義で遡って測ると(遡及測定・参考値)、ネオジム磁石は38.6(分散)、その原料のジスプロシウム・テルビウムは70.6(逼迫)でした。下流の分散は、上流の集中を打ち消しません。括りごとの読みは「その括りの中の集中」であり、連鎖の読みは上流の括りとあわせて行ってください。

こうして得られる構造スコアが、形の項目の得点率になります。前編はここまで——後編(第3回「二層評価」)で、定義が完結します。 区分と遷移の読み方は、第4回で。
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